本日の空模様

【登場人物】
サン (♂):太陽。短気で単純。 クロウと仲が悪く、しょっちゅう喧嘩している。
ゲツ (♂):月。 真面目で温厚。怒ると怖い。みんなのお兄さん的存在。ウィンとは同期。
ライ (♀):雷。 無邪気で素直。レインを姉のように慕っている。
レイン(♀):雨。 冷静で鋭敏。 ライを妹のように可愛く思っている。
クロウ(♀):曇。 天邪鬼で一途。ウィンとは恋人同士。サンとは仲が悪い。
ウィン(♂):風。 実直で天然。 クロウとは恋人同士。ゲツとは同期。


001 サン 「いやー夏はいいな! まさに俺の季節! 最高!」
002 ゲツ 「サン、調子に乗るな。 最近「暑過ぎる」と苦情が山ほど来てるのを忘れたのか?」
003 サン 「うっ……わ、忘れてねぇけど……テンション上がっちまうんだから仕方ねぇじゃん。
        俺はお前と違ってこういう時くらいしか注目を集められねぇんだからさ〜。」
004 ゲツ 「ふてくされるな。 俺だってクロウの機嫌次第では全く人目に触れない時もある。
        それに、昼は俺よりお前の方が目立っているだろう。」
005 サン 「そうだけど……俺の放つ光は強すぎて空まで明るくしちまうから、
        街灯みたいな程良い光で地上を照らせるお前が羨ましい。」
006 ゲツ 「……お前は何も分かってないな。」
007 サン 「え?」
008 ゲツ 「俺は自分では光を発することができない。
        だから、お前がいないと地上を照らすこともできないんだ。
        お前にはいつも助けられているぞ。 感謝してもしきれない位、な。」
009 サン 「ゲツ……。」
010 ゲツ 「俺だけじゃない。 動物も植物も皆、お前がいるから元気に生きられるんだ。」
011 サン 「…………うん、ありがと。」
012 クロウ「相っ変わらずゲツは甘いねー。 そんなんだからサンが調子に乗るんだよ。」
013 ゲツ 「クロウ、いたのか。」
014 サン 「うわ、出た!」
015 クロウ「さっきからずっといたよ。
        ……ていうか、「出た!」ってアンタ何様のつもりー? 喧嘩売ってんの?」
016 サン 「盗み聞きしてた奴がよく言うぜ。」
017 クロウ「人聞きの悪いこと言わないでくれる? 気付かなかった鈍ちんはアンタ達でしょー?」
018 サン 「あぁ? 何だテメェやんのか?」
019 ゲツ 「おい、2人ともいい加減に(しろ……。)」
019 クロウ「(ゲツの言葉を遮って)か弱い女の子に手出す気? サイテー。」
020 サン 「どこに「か弱い」女の子がいるってんだ? 見あたらねぇな〜。」
021 クロウ「ふーん……そっちがその気なら……ねぇゲツ、今日のお仕事何時からー?」
022 ゲツ 「? 19時12分からだが……それがどうかしたのか?」
023 クロウ「そっかぁ……ううん、何でもない。 教えてくれてありがとねー。
        じゃあ、私はちょっとやらなきゃいけないことがあるからこれでー。」
024 ゲツ 「あ、あぁ……またな。」
025 サン 「もう二度と来んな。」

※クロウが立ち去る

026 ゲツ 「…………なぁ、サン。」
027 サン 「うん?」
028 ゲツ 「なんだか今日のクロウ、変じゃなかったか?」
029 サン 「そうか? いつも通りだろ?」
030 ゲツ 「……「いつも通り」……か……。」

【間】

031 サン 「うわっ!! 何なんだ、この雲!! 邪魔くせぇなッ!!」
032 ゲツ 「これは…………まずいぞ、サン。」
033 サン 「まずいって何が?」
034 ゲツ 「この雲は……。」

※落雷の音

035 サン 「なっ……!!」
036 ゲツ 「やはりな……。」
037 サン 「おいおいおい、今日は「一日中快晴」のハズだろ?! こんなん聞いてねぇぞ?!」
038 ゲツ 「……アイツ……。」

※豪雨の音

039 サン 「雨まで降り出しやがった……一体どうなってんだ?!」
040 ゲツ 「……ちょっと、行ってくる。」
041 サン 「え? 行ってくるって何処へ……おい、ゲツ?!」

※ゲツが走って何処かへ行ってしまう

042 ゲツ 「……ライ、レイン!! 出て来い!!」
043 ライ 「あ、げっちゃん!! どうしたの? こんな時間にここに来るなんて珍しいね!!」
044 ゲツ 「……ライ、この雷はどうした?」
045 ライ 「? どうしたって……どういう意味?」
046 ゲツ 「お前、今日仕事ではないだろう? なのに何で……。」
047 ライ 「それは……えっと……。」
048 レイン「クロウさんに言われて、シフトを変更したんです。」
049 ライ 「レイン!!」
050 ゲツ 「それは本当か?!」
051 レイン「はい。」
052 ゲツ 「何て言われたんだ?」
053 レイン「「サンが疲れていて休ませてあげないとまずいから、
        今からサンの変わりに出てもらえないか」って言われました。 そうですよね、ライ?」
054 ライ 「うん!! サンちゃん大丈夫かな〜?」
054 ゲツ 「……クロウは今何処にいる?」
055 レイン「おそらくですけど……あの分厚い雲の中にいると思います。」
056 ゲツ 「分かった。 ……ライ、レイン。」
057 ライ 「ん?」
058 レイン「何ですか?」
059 ゲツ 「……サンならもう大丈夫だ。 だから、お前達はもう休んでいいぞ。」
060 ライ 「ほんとに?! 良かったぁ〜!!」
061 ゲツ 「……ライは優しいな。」
062 レイン「……では、お先に失礼させて頂きますね。 行きましょう、ライ。」
063 ライ 「うん!! げっちゃんまたねー!! バイバイ!!」
063 ゲツ 「あぁ。 急に呼び出して悪かったな。」

※ライとレインが立ち去る

064 ゲツ 「…………あそこか。」

【間】

064 クロウ「ちょっと何で雷と雨が止むわけー? あの2人は何やってんの?」
065 ゲツ 「クロウ。」
066 クロウ「!! ……ゲツ。」
067 ゲツ 「何があったかは知らないが、いくら何でもやりすぎだ。」
068 クロウ「……何の話?」
069 ゲツ 「とぼけるな。
        嘘をついてまで天候を変えるなんて、天気を司る者として許されないことだぞ。」
070 クロウ「……怖ーい顔。 ゲツらしくない。」
071 ゲツ 「(ドスの効いた声で)クロウ。」
072 クロウ「ッ!! …………分かった、謝るよ……ごめんなさい。」
073 ゲツ 「(優しく)……何があったんだ?」
074 クロウ「…………ウィンと喧嘩した。」
075 ゲツ 「ウィンと? ……どうしてまた?」
076 クロウ「……さっきウィンのところに遊びに行ったら、綺麗な女の人が出てきたの。
        しかも、ウィンは家にいなくて……そのことでメールしたら「後で話がある」って……。」
077 ゲツ 「……それで?」
078 クロウ「…………ムカついて、「もう知らない」ってメールして……それからずっと電源切ってる。」
079 ゲツ 「……なるほどな。 ……でも、それは多分お前の勘違いだと思うぞ?」
080 クロウ「え……どうして?」
081 ゲツ 「それは……。」
082 ウィン「クロウ!!」
083 クロウ「!! ウィン?!」
084 ゲツ 「……来たか。」
085 ウィン「(息を切らせながら)クロウ……こんなところにいたのか……探したぞ。」
086 クロウ「…………。」
087 ウィン「……ゲツ、お前がこんな時間にこんなところにいるなんて珍しいな。 
        何かあったのか?」
088 ゲツ 「…………なるほど。 周りが見えなくなる位、必死に探してたのか。」
089 クロウ「!!」
090 ウィン「? 何の話だ?」
091 ゲツ 「……「リア充爆発しろ」って話。」
092 ウィン「は?」
093 ゲツ 「……クロウ、良かったな。」
094 クロウ「…………うん。」
095 ゲツ 「……では、俺はこれにて失礼する。 ……ウィン、明日の晩はよろしく頼む。」
096 ウィン「あ、あぁ……こちらこそよろしく。」
097 クロウ「ゲツ……ありがと。」
098 ゲツ 「……どういたしまして。 ……クロウ、健闘を祈る。」
099 クロウ「! うん! 頑張る!」
100 ゲツ 「……またな。」

※ゲツが立ち去る

101 ウィン「「健闘を祈る」って……これから戦いにでも行くのか?」
102 クロウ「ううん、そうじゃなくて…………あの…さ、さっきの話だけど……。」

【間】

103 クロウ「サン。」
104 サン 「ん? ……またお前か……何しに来やがった?」
105 クロウ「この間はゴメン。」
106 サン 「…………へ?」
107 クロウ「そ、それだけ! じゃーね!」

※クロウが立ち去る

108 サン 「……アイツ……熱でもあるんじゃ……。」


109 クロウ「ゲツ!!」
110 ゲツ 「クロウ。 どうした?」
111 クロウ「お礼を言いに来たの。」
112 ゲツ 「お礼?」
113 クロウ「喧嘩のこと……ゲツの言う通り、私の勘違いだった。」
114 ゲツ 「……良かったな。」
115 クロウ「うん…………ウィンにあんな綺麗なお姉さんがいるなんて知らなかった。」
116 ゲツ 「それは同感だ。 似てないにも程がある。」
117 クロウ「あはは、そうだね。 …………あ、じゃあ私、そろそろ行くね。」
118 ゲツ 「どこか行くのか?」
119 クロウ「ライちゃんとレイちゃんのところに行って来る!」
120 ゲツ 「そうか……頑張ってこい。」
121 クロウ「うん!」

※クロウがゲツの前から立ち去る

122 ゲツ 「……やっぱり、アイツには笑顔が一番似合うな。 …………と、もうこんな時間か。
        今晩の天気は……「晴れのち曇り」。
        ……頑張ったご褒美に何か甘いものでも買っていってやるかな。」







【本日の空模様】END。